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【映画】「サムソンとデリラ(1949)」もの凄く詳しいあらすじと、ヘディ・ラマーの波乱万丈ぶり

おすすめ度 ★★★★★

題名 サムソンとデリラSamson and Delilah
監督 セシル・B・デミル
制作 セシル・B・デミル
出演 ヘディ・ラマー、ヴィクター・マチュア、ジョージ・サンダース、アンジェラ・ランズベリー
音楽 ヴィクター・ヤング
上映時間 128分
制作年 1949年
制作会社 パラマウント映画
制作国 アメリカ
ジャンル 聖書、スペクタクル

 

 

「サムソンとデリラ」といえば旧約聖書に出てくるお話で、「バベルの塔」とか「モーセの十戒」とか「ノアの方舟」ほどではないにしても、かなり有名。

キリスト教圏の映画や本、音楽などでは時々出てくるので、知っておいて損はない、聖書の逸話。

かなりそっけない聖書の記述を、設定などを若干脚色した結果、実に身近でわかりやすい娯楽スペクタクル作品に仕上がっている。そして面白い。

楽しく教養がついて、かなりオススメ。

今回は、聖書を知らない方向けに、結構詳しいあらすじに、ちょいちょい感想を挟んでいこうと思います。


※ 正しい発音は「デライラ」らしい(あるいは「ディライラ」)。
トム・ジョーンズが「でらいらああああ!でらいらああああ!」って歌ってます。名曲です(歌の内容は聖書とは全く関係ありません)。

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あらすじ(前半)

ダン族の怪力男サムソンは「無敵男」なのだけれど、その無敵の秘密は髪の毛にあって、髪を切ると力がなくなってしまう。だから生まれてこの方髪の毛を切ったことがないロン毛男子だ。

サムソンは支配者ペリシテ人の女セマダルを妻に貰おうと口説いていたが、セマダルには婚約者がいる。そんなサムソンに熱烈に片思い中なのが、セマダルの妹デリラ。デリラはとにかくサムソンに首ったけで、なんとか自分のものにしたくて仕方がない。

そんななか、サムソンは獅子を素手で殺すという荒業をやってのける。彼にしてみれば朝飯前なのだが、ペリシテ人の王は信じない。デリラが「ほんとよ」と助太刀するがやっぱり王は信じず、最強の部下と闘わせてサムソンの力を確認する。もちろんサムソンの圧勝。感心した王は「好きなものを褒美にとらす」と言い、サムソンはセマダルを妻にしたいと望む。デリラ、大ショック。色々尽くしたのに、サムソンに見向きもされない。

サムソンとセマダルの結婚式。なんとそこにはセマダルの元婚約者もいる。そんな中、サムソンはペリシテ人たちに謎かけをする。謎が解ければ高級マントを全員にやるし(30人分)、誰も解けなければお前たちのマントを俺がもらう、と。

それでペリシテ人たちはいろいろ考えるけど全然分からない。絶対にサムソンに負けたくないペリシテ人は、セマダルを使ってサムソンから答えを聞き出そうとする。セマダルに首ったけのサムソンはセマダルに答えを教えてしまう。セマダルは元婚約者に秘密をばらす。

ペリシテ人たちに答えを当てられてしまったサムソンは「セマダルが教えたんだな、俺を裏切ったんだな」と気が付く。しかし約束は約束。セマダルを口汚くののしった後、町へ出て金持ちを殺して30人分のマントを奪って戻ってくる。

すると、セマダルと元婚約者の間で結婚式が終わってしまっていた。オドロキ。

というのも、セマダルの裏切りにキレて出て行ったサムソンを見て、「ああもうサムソンはセマダルをもらう気はなくなったろう、結婚式どうしよう」と思ったセマダルの父親に、デリラが「あそこに元婚約者がいるわよ」と入れ知恵したから。「ナイス・アイディア」と思った父親の手によって二人の結婚が執り行われてしまったのでした。サムソンはただ30人分のマントを奪いに行っただけだったのに。

困った父親は、戻ってきたサムソンに「気が変わったと思ったんだ。でもほら、妹のデリラがいるよ。デリラの方が美人だし、あんたに惚れてる」と言ってデリラを売り込む。デリラもその気満々。でも「なめんな!」とサムソンはこっぴどく拒絶。そしてセマダルを探したら、セマダルは元婚約者と今からイチャイチャしようとしているところだった。

それでサムソンとペリシテ人が大暴れになって、セマダルが死亡。さらに暴れたサムソンは怪力で圧勝の全員皆殺し。そして家に火をつけて燃やしてしまう。燃える家を見てデリラはサムソンに復讐を誓う。

 


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ちょっと休憩して、あの “なぞなぞ” について

おもろいなー。

ところで、サムソンがペリシテ人らに投げかけた謎というのが、

「食らうものから食べ物が出て、強いものから甘い物が出た。それはなーんだ」 

というもの。 ??? 答えわかります? 

答えは 「獅子とはちみつ」 っす。

サムソンの解説によると、だいぶ前に、死んだ獅子の体の中に蜂が巣を作ってはちみつができているのを見つけて、それを舐め舐め家に帰ったことがあるらしい。

で、「食らうもの=強いもの=獅子」 「食べ物=甘いもの=はちみつ」というわけ。

ワカルカー!個人的すぎ!  ( `ー´)ノ ウオー! 

これはペリシテ人が30人でウンウン唸って考えてもわかるはずがない。彼らにキレられても文句言えない。

 

 

あらすじ(真ん中へん)

その後、デリラはペリシテ王の愛人になって王に貢がれる身分になっていた。

一方サムソンはペリシテ人への恨みからか盗人になり、かつて奪われた財産を取り戻すかのようにペリシテ人を襲っていた。

なんとしてでもサムソンを捕らえたいペリシテ王と、なんとしてでもサムソンを振り向かせたいデリラ。しかしペリシテ王の軍勢もサムソンの怪力にはなすすべがなく、手づまりに。

そこへデリラが「私がサムソンの怪力の秘密を聞き出して見せますわ」と名乗り出る。もし成功した暁には、サムソンに煮え湯を飲まされた豪族たち全員から銀貨1100枚ずつを報酬にいただく契約で。サムソンに関しては「彼を捕まえても絶対に刃をあてず、流血もさせちゃだめよ」という約束で。

うまくサムソンと再会したデリラはサムソンを口説きにかかる。今度ばかりはサムソンもデリラの魅力に気づき、ようやく良い仲になれる。

イチイチャしながらデリラはサムソンの怪力の秘密を聞き出そうとするが、3度サムソンは嘘をつく。しかし傲慢な態度の仲にも健気な一面をのぞかせるデリラに、サムソンはとうとう「秘密は髪の毛」と話して聞かせる。サムソンを自分だけのものにしたいデリラは、ダン族もペリシテも捨てて一緒にエジプトに逃げようと誘う。

と、そこへサムソンと同族の幼なじみで、ずっとサムソンを慕っているミリアムが現れる。故郷で母親や父親、ダン族の人々がペリシテ人に虐殺されているというのだ。「故郷を救って」と頼むミリアム。しかしサムソンを絶対に他の女に手渡したくないデリラは、サムソンに一服盛って眠らせて、その隙に髪を短く刈ってしまう。そしてペリシテ王に使いを出し、サムソンを無力化したことを報告するのだった。



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聖書でのデリラはこんな感じ

聖書的には、デリラは「アダムとイブ」のイブのような、男を惑わす悪女の代表。

聖書だと、デリラは別にセマダルの妹でもないし、サムソンに首ったけという設定でもない。セマダルに相当する女は出てくるけど名前は与えられていないし、その女に妹がいて姉の代わりにサムソンの嫁にしようと父親が申し出るくだりはあるけど、その妹がデリラなわけでもない。

じゃあ聖書においてデリラはなんなのかというと、話の途中から出てきて、大金を積まれて秘密を聞き出し、サムソンを売る遊女として出てくる。

彼を愛しているとかいう設定は無く、ただただ大金を積まれて三回秘密を聞き出そうとし、三回ともサムソンに嘘をつかれる。

その時、聖書のデリラはサムソンの不誠実をなじったりしている。

金目当てのくせに、、、いったいどの口が・・・この口か! (-_-)/~~~ピシー!ピシー! って感じ。

サムソン的には、愛を囁く度に「あなたは私に嘘ばかり言って怪力の秘密を教えてくれない。それなのに愛してるなんて言ったって、信じられると思うの」と、毎日毎日(笑)責められて、それで根負けしたサムソンが「実は髪の毛がさあ・・・」と白状するという、そういう状況。

あはは。かわいそうなサムソン。

聖書的にはそれでデリラの出番は終了。デリラはただただ、サムソンから怪力の秘密を聞き出すためだけに出てくる。

 

 

あらすじ(後半)

サムソンの秘密を聞き出したデリラは、約束通り大金持ちになり、「サムソンには絶対に刃をあてず、流血もさせない」という約束もちゃんと守られる。しかしサムソンはデリラの知らないところで、一滴の血も流さない方法によって両目をつぶされていた。そして家畜のように過酷かつ屈辱的な労働につかされる。

王に「サムソンの惨めな姿を見物に行こうぜ」と誘われたデリラは、王と共にサムソンが臼引きをする姿を見に行く。サムソンはペリシテ人たちに侮辱的な扱いを受けながら、粉を引いていた。自分に冷たい仕打ちをし続けたサムソンに自分の勝ち誇った姿を見せつけようとしたデリラは、そこでサムソンの両目がつぶされていることに気がつく。

季節が変わり、デリラは後悔の念にさいなまれていた。苦しむデリラは神に「サムソンの目に光が戻るなら、自分の目を差し上げます」と祈る。そして牢獄にサムソンに会いに行き、「あなたの杖となって一生をかけて償うわ」と懺悔する。

しかし簡単には信じてもらえないデリラ。サムソンがデリラを投げ飛ばそうと抱えた瞬間、サムソンの鎖が切れる。時が経ち、髪が伸びて力が戻っていたのだ。

さっそくペリシテ王に復讐しようとするサムソンだが、目が見えないことには変わりがない。まもなくペリシテ人の祭りで自分が見世物にされる予定であることを知ったサムソンは、神殿ごとペリシテ王を押しつぶそうと計画する。デリラへの愛を認めたサムソンは、デリラに「神殿には入るな」と警告する。

しかし祭り当日、デリラの姿も王と共にある。サムソンが慰み者にされるのを見て、デリラは自分も見世物の一環としてサムソンにムチをくれる役を引き受ける。サムソンはデリラに自分を神殿の柱のところにうまく案内するよう頼む。

うまく神殿の柱にたどり着いたサムソンとデリラ。神殿を崩して自分も死ぬ覚悟のサムソンは、デリラにここから立ち去るよう告げる。デリラは立ち去る振りをして立ち去らない。サムソンが怪力を振り絞り柱を倒すと、次々と柱が倒れ、巨大なダゴン神が倒れ、神殿は崩れ落ち、サムソンとデリラもその下敷きになる。



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映画のデリラ、笑えるレベルで私は好きよ。かわいいと思う。

ドラマチック! 聖書映画はほんとに面白い。

悪女と言われても仕方のないデリラだが、 私はこの映画のデリラは大好き。

もうサムソンが好きすぎて訳わかんなくなっちゃってて、手に入れるためにはなんでもやっちゃう。どこまでも残酷、だけど美しくもある。

最後の最後、神殿でのまさにクライマックスで、王にサムソンの恩赦を求めに来たミリアムに向かって、「あんたは彼を独占したいだけでしょ。あんたに渡すくらいなら殺す方がマシ」って言ってた(笑)

ぜんぜん懲りてねーw 「彼がそれで助かるなら私は身を引くわ」的な発想がゼロ。皆無w 

でもここで私は、

「いいよー、デリラ! そうこなくっちゃ! ( `ー´)ノ 道徳的かつ小市民的な善良さはミリアムにお似合い! あんたには “デリラ道” を貫いてもらいたい!」

と喝采を送ってしまったのでした。

 

 

やっぱ美人だからかな(笑)

惡の華、でも一途。・・・高慢ちきな自己中ぶりが、かわいくすら見えるのは立派。

・・・・・・まあ、「美人」だからだけど。

これがブスだったらたぶん無理。いわゆる「醜女の深情け」ってやつになって目も当てられないこと必死。美醜を言うのはよくないのかもしれないが、でも事実だし、美しい方がドラマになるんだから仕方ない。「美しいものは尊い」と、私は潔く認めます。

このデリラをやった女優ヘディ・ラマー、すごい美人でしょう。ビビアン・リーが髪型を真似したらしいが、髪型だけでなく雰囲気もよく似ている。

ヘディ・ラマーがビビアン・リーの髪形を真似したんじゃないよ。ビビアン・リーがのヘディ・ラマーの真似をしたの。


👇 ヘディ・ラマーさん


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ヘディ・ラマーの、信じられない漫画みたいな人生

ところで、このヘディ・ラマーの人生が実に興味深い。

まず、もともと女優志望だったがスクリプターとして映画界に入り、ほどなく映画会社の目にとまって端役デビュー。そしてチェコ映画『春の調べ(1933)』に出演して、映画史上初のフル・ヌードを披露してセンセーションを巻き起こした。

兵器製造業者の男性と結婚するが、嫉妬深い夫は彼女のヌードを見られないよう『春の調べ』のプリントを買い占めようとし、さらに自宅のシュヴァルツェナウ城に幽閉して強引に映画界を引退させた(城に住んでたのね・・・)。

その後、嫉妬深い夫とナチスドイツの影響下から逃げ出そうと、メイドの姿に変装してパリに逃亡。パリでは映画プロデューサーのルイス・B・メイヤーにスカウトされてハリウッドに渡り、再度女優デビューした、とのこと。

 

なにこの人生。映画じゃん。

 

これだけではなーい。白眉なのはここから。なんと彼女は発明家になるのだ。それも「主婦の発明」みたいにドメスティックな、「改善レベル」のものではない。理系の本格的なやつ。

「交通信号機の改良版」とか「水に入れると炭酸になる錠剤」なんかも作っているらしいが、第二次世界大戦中、魚雷の無線誘導システムが敵国の通信妨害を受けて機能せず、目標を攻撃できない事態が発生していることを知ったヘディ・ラマーは、作曲家のジョージ・アンタイルの協力のもと、魚雷に送る電波の周波数を頻繁に変えて妨害されにくくする「周波数ホッピングシステム」というものを発明。最初の夫が兵器製造業者で、その時に無線の知識を学んでいたらしい。

そして特許も取ったが、残念ながら実装困難だったことと、なによりも当時の海軍は、軍人でもなんでもない外部からの発明を受け入れる土壌がなく、このときは実装されなかったらしい。

しかしこの改良版が1962年のキューバ危機の時に実装される。

その後、この発明で賞をもらったり、全米発明家協会に殿堂入りを果たしたり、彼女のルーツであるドイツ語圏では彼女の誕生日が「発明の日」として定められているんだとか。

 

すごくない?(笑) 

しかし女優として陰りが出てきて1958年に引退したあと、1966年に万引きでつかまり、1991年にはまた万引きで逮捕。現役時代に稼いだ30億円にも上るギャラを使い果たし、サンドイッチを買うお金もなかったらしい。その時万引きした商品は、下剤と目薬だったんだとか。この時77歳。

晩年は容姿が衰えるのを恐れて美容整形をしたが、結果はあまりかんばしくなかったらしい。享年85歳。

もうなんでもやってくれ。あたしゃ、あんたを尊敬するよ。 

 

 

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