おすすめ度 ★★
題名 地球の静止する日(The Day the Earth Stood Still)
監督 ロバート・ワイズ
原作 ハリイ・ベイツ 「主人への告別」(1940年)
出演 マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ビリー・グレイ
音楽 バーナード・ハーマン
上映時間 92分
制作年 1951年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル SF、モノクロ
題名をみて「突然地球を止めたら慣性の法則でみんな宇宙に吹っ飛んじゃうんじゃないの? いくら50年代のSFでもこれはひどい」と思ったけど違っていた。地球は全然止まらなくて、機械が止まってた。
・・・全然違うじゃん。原題が「The Day the Earth Stood Still」だから誤訳というわけでもないから、原題が不正確なのか。まあ・・・なにか大掛かりなことが起こりそうな雰囲気は伝わるから・・・いいか。
とはいえ、かなり真面目なSFで、見ていて楽しい娯楽作というよりも、平和プロパガンダ映画みたいな作品だった。
どんな話か
宇宙人クラトゥと宇宙警察ロボットのゴートが、宇宙をはるばる地球まで説教しにやって来るという話。
👇 クラトゥ(右)とゴート
Par 20th Century Fox — 20th Century Fox, Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5410070
その言いぐさとは
クラトゥに言わせると、地球人が銃とか戦車とかで戦っている間は「好きにやらせてやろう」と思って放置してきたが、最近原爆を使用し始めたのを知って、近隣に迷惑をかけないよう忠告しにやってきたとのこと。
連れているロボットのゴートは、言ってみれば宇宙の平和と規律を守る「宇宙パトロール」のような存在で、逆らうと地球を破壊するほどの力を持っているらしい。
「地球人だけでやらかしている間は好きにしていていいよ、でもこれ以上外に行くんなら言うこと聞かないと地球を爆発するよ、こっちの言う事を聞けば限定された自由を与えるよ」と言っていた。
Par "Copyright 1951 by Twentieth Century-Fox Film Corp." — Scan via Heritage Auctions., Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86859809
感想
すごいのよ。有無を言わさない圧力で。
平和を暴力で実現しようというやり方。いい人風に見せてからの、しっかりドスも効かせる怖いやつ。
クラトゥの言っていることから想像すると、どうやら宇宙には惑星間連合みたいなのがあって、気の利いた惑星はみんなそこに加入していて、うまく平和を維持している。そこでは平和や正義をロボットにまかせて判断させている、ということだったと思う。
大丈夫かなあ、そのやり方で。
70年代の竹宮惠子の漫画『地球(テラ)へ・・・』を思い出した。コンピューターを「マザー」とか呼んで、完全に信頼しきっていたよね。でも最後は人間が反旗をひるがえすの(←傑作漫画です)。
クラトゥの言う宇宙人コミュニティに加入しているような、高度に発達した惑星の宇宙人たちは、みんなクラトゥみたいな人なんだろうか。
みながクラトゥみたいだとすると、節操があって常識があってモラルがあって、淡々と、粛々と任務をこなしていて・・・なんだか欲望がなさそう。
その社会、ちゃんとしすぎていて、いまひとつ面白みに欠ける気が。何のために生きてるんだろう。
理想か? 理想のためだけに生きてるのか? 高度な知性で知的好奇心だけで生きてるのか?
誰の言葉だったか忘れたが、「私は天国の退屈さよりも地獄の多彩さを好む」というのを読んで、「私も!」と共感した者としては・・・ちょっと未来が心配。
リアル社会でもじわじわと数十年かけて、ちゃんとしすぎた社会になってきて、逆に不自由になってんじゃないのと、ずーーーっと思ってきたし・・・この数年はさらに拍車がかかっている模様。
目指せ、善良な監視社会。やだなあ。
別に悪が栄えることを望んでいるわけじゃないけど、全員が善人の世界に生きたいとは、思わないのよね・・・。天国というところに対して不信感がある。
私は「多彩な天国」を希望します!
意外にも監督は名匠ロバート・ワイズ
ところで監督がロバート・ワイズだった。ロバート・ワイズと言えばすぐに『ウェスト・サイド・ストーリー(1961)』とか『サウンド・オブ・ミュージック(1965)』が頭に浮かぶ名監督だが、意外とこういうSF映画も監督しているのよね。
『アンドロメダ・・・(1971)』はともかく、『スタートレック』の映画化第一作目(1979)もロバート・ワイズだったとは気づかなかった。
私、トレッキーとは言えないまでもスタートレック・ファンなのに、あんまり監督に注目していなかったから気付かなかった。
かなり幅の広い職業監督タイプなのね。
リメイクもあるよ
ちなみに2008年のキアヌ・リーヴス版は『地球”が”静止する日』で、オリジナルは『地球”の”静止する日』です。
キアヌ版も、テーマこそ「核」から「環境汚染」へと変わっているけど、かなりオリジナルを踏襲していて好感が持てた。
それに、オリジナルではやや不明だった、
「クラトゥはなぜ人間そっくりの風貌をしているのか」
「銃で撃たれた傷がすぐに治る理由」
「クラトゥの超人的な力」
などの説明もなされて説得力が増していたし、もちろんエンターテインメント性は大幅にアップしていた。
ちょっとCGが安っぽいのと、地球が静止するタイミングがオリジナルと違っていて私には意味不明だったけど。
そしてキアヌは『マトリックス(1999)』に引き続き、またもや「ヌルヌル」になっていた。なぜキアヌはヌルヌルになるのか。
よかったらぜひ見比べてみてください。
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