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割と自己流で生きています

【映画】「オズの魔法使 (1939)」~自分には何かが足りないと思ってる人へ~

おすすめ度 ★★★★ 

題名 オズの魔法使(The Wizard of Oz) 
監督 ヴィクター・フレミング
制作 マーヴィン・ルロイ
原作 ライマン・フランク・ボーム「オズの魔法使い」 
出演 ジュディ・ガーランド、レイ・ボルジャー、ジャック・ヘイリー、バート・ラー、フランク・モーガン、ビリー・バーク
上映時間 101分

制作年 1939年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル ミュージカル、ファンタジー、アカデミー作曲賞、アカデミー歌曲賞




40年代を代表する大スター、ジュディ・ガーランドの大出世作で、不朽の名作。MGMミュージカルの最高傑作のひとつ。全編を流れるミュージカル・ナンバーも傑作。

監督のヴィクター・フレミングは同じ年に「風と共に去りぬ」を制作している(信じられる?)

原作はライマン・フランク・ボームが1900年に出版した童話「オズの魔法使い」。どうでもいいことだけど、原作の題名は送り仮名には「い」があるけど、映画版は「い」はつかない。

現実の世界は「セピア色」、魔法の国は「カラー」で撮影されている。魔法の国に到着し、セピア色のドロシーがドアを開けると、そこには総天然色の世界が広がる。

 


Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16514146

 

 

おはなし

カンザスの農場暮らしのドロシーは、叔父さんや叔母さん、使用人たちに愛されながら生活していた。

でも地主のガウチさんは意地悪で、ドロシーが飼っている犬のトトを連れ去ろうとする。ドロシーはトトを守るために家出を決行。途中で興行師の「千里眼」マーベル教授と出会い、水晶玉占いで「あなたを愛している人が悲しんでいるよ」と諭される。

ドロシーは急いで帰るが、そこへ竜巻が襲ってきてドロシーだけ取り残されてしまう。ベッドの上で気を失って気が付くと、なんと家が竜巻に吹き飛ばされて空中を飛んでいた。

窓からは同じく竜巻に巻き上がられたニワトリや牛、編み物をするおばあさん、おまけに自転車を漕ぐガウチさんの姿も見える。「ガウチさん!」するとガウチさんは、箒にまたがる魔女の姿に変わってしまった! 

家ごと墜落したドロシーがドアを開けて外に出ると、なんとそこには総天然色の不思議な風景が広がっていた。

ドロシーは魔法の国で、魔女や住民のマンチキンたちと出会う。ドロシーは家への帰り方を聞くため、魔法使いオズがいるエメラルドの国へ向けて旅をはじめる。

その途中、脳みそが欲しい案山子男、心が欲しいブリキ男、勇気が欲しいライオンと出会い、それぞれ願いをかなえてもらおうと4人はオズに会いに行く。

 


Par MGM — source, Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=67657066

 

 

自分には足りないものがある、、、と誰もが思っているけれど

ドロシーは家に帰りたいだけだけど、他の3人は「自分には “あれ” が足りない」と思ってる。

案山子男は「脳みそ」が、ブリキ男は「心」が、ライオンは「勇気」がない、と。

 

案山子男

「脳みそがわらで出来ているから自分には知恵がない」と言う案山子男。

 


Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20870956

 

でも彼は喋りが達者で、ユーモアのセンスがある。

自分が縛り付けられた丸太から降りる時も、どうしたら案山子男を降ろせるか分からなくているドロシーに「僕は考えるのは苦手だけど、クギを抜いてみたら?」とアドバイスを送っている。

リンゴを調達するときは敢えて木に喧嘩を売って、木の方からリンゴを投げつけてくるように仕向けているし、彼が思うほど、脳みそはぜんぜん藁ではないのだった。

 

ブリキ男

「僕の体はがらんどうだから、僕には心がない」と思うブリキ男。


By http://artwork.barewalls.com/product/framer.exe?ArtworkID=161444&thumbs=1&productid=188022, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=4529815

 

ブリキ男は中がからっぽの胸を叩いて「鍛冶屋がぼくを作る時に心を入れ忘れたんだ。心があれば愛や芸術に胸をときめかすこともできるし、スズメや天使とも友達になれるのに」と言う。

だけどそう思うこと自体が、すばらしくロマンティックで繊細なことなのだった。

 

ライオン

臆病なライオンは、実際ずっと臆病風に吹かれていたけれど、西の魔女に捕まったドロシーを助けに行く場面では急に頼もしくなっちゃって、一番先頭に立って夢中で険しい崖を上り、他の二人を引っ張り上げたりして、実はやれば出来るのだった。

 


Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20854669

 

 

自信を持とう!

みんな、自信がなかっただけなんだよ、と。賢い自分、優しい自分、勇気のある自分に気が付いていないだけなんだよ。

オズも、映画のラストで3人に「君たちはもともと持ってるんだよ」みたいなことを言って、半信半疑の3人の自信をつけさせるためにトロフィーを渡していた。

案山子男には卒業証書を、ライオンには勲章を、ブリキ男には機械仕掛けのハートの時計を。



これ面白いなあ、と思った。

「人間は揺らぐ生き物だ」という前提で書かれたシーンだと思う。言葉で激励するだけではなく、“目に見えて、触れる物”を渡した、というところが味噌かと。


賢さとか、優しさとか、勇気とか、自信とか、そういうのって目に見えないし、手で触れるわけじゃない。だから「あった」と思った次の瞬間「やっぱりなかった」と思うことなんて、しょっちゅうだ。

私は賢いのかもしれないし、馬鹿なのかもしれない。優しいところもあると思うけど、冷たい時もある。勇気あったなーという行動が取れる時もあれば、気後れして引っ込んでしまう時もある。

自分はイケてる!って常に信じていられたらいいけれど、人間は一面的じゃないし、常に良い面が見せられるわけじゃない。



でも・・・誰かのお墨付きがあれば、そう思っていられる時間が長くなるかも。

みんなが「頭いいね」ってしょっちゅう言ってくれれば「わたし頭いいのかも」って思えるかも。しょっちゅう「優しいね」って言ってもらえれば自分は優しいのだと思えるかも。しょっちゅう「勇敢だね」って言ってもらえれば自分は勇敢だと思えるかも。



だからオズは言葉だけじゃなく、トロフィーも渡した。

「言葉だけじゃ揺らぐ」けど、目の前に証拠があれば、ずっと信じることができるでしょ、と。確信が持てるでしょと。

部屋にトロフィーをたくさん飾っている人みたいに、時々取り出して眺めたり、なでまわしたり、賞賛されたという過去の自分を遠い目で見て、牛が反芻するように・・・・・・

今はパッとしていなくても、少なくとも「“あの時の自分” は凄かった」とは思えるもんね。

(自分にとっての)過去の栄光の肩書が書いてある前職の名刺を、異動後や転職後でも配ってしまう熟年サラリーマンも多いと聞く。私のかつての上司にもそういうのがいた。

その上司の姿を見て「しみったれてるな、未練がましいな」と思った私は、そういうのかなり嫌なんだけど、「でもそれが人間ってものなのかもしんないな」とも思うのだった。

 

 

こんな大人になりたいもんだ

私が好きな登場人物はマーベル教授。

彼はいわゆるインチキ興行師で、「ヨーロッパの王族もご用達『千里眼』マーベル教授」と謳って水晶玉占いなんかしている。そして訪ねてきた少女のドロシーを見て「家出だな」と察し、インチキ水晶玉占いをする。

大人のマーベルはドロシーを家に帰さなくちゃいけないと考えて、水晶玉をのぞき込みながら「叔母さんは泣いているようじゃ。愛している誰かに心を傷つけられたのかもしれん。は! これは大変じゃ! 胸を手で押さえてベッドに崩れ落ちたぞ!」と小芝居を打つ。

するとそれを信じたドロシーは「大変!家に帰らなきゃ!」となって慌てて家に向かう。

人生経験豊富なおじいちゃん教授は、なんでもお見通し。ドロシーを批判したり、説教したりすることなく、自然とドロシーが家に帰りたくなるよう仕向ける。

こういう余裕のあるやさしさ、高度です。

 

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