おすすめ度 ★★
題名 幻の女(Phantom Lady)
監督 ロバート・シオドマク
制作 ジョーン・ハリソン
脚本 バーナード・ショーンフェルド
原作 ウィリアム・アイリッシュ 「幻の女」(1942)
出演 アラン・カーティス、エラ・レインズ、フランチョット・トーン、トーマス・ゴメス
上映時間 83分
制作年 1944年
制作会社 ユニヴァーサル
制作国 アメリカ
ジャンル ミステリー、モノクロ
原作が超有名な、ウィリアム・アイリッシュ『幻の女』の映画化。
原作は映画化に不向きだと私は思っていて、それの映画化だから、たぶんうまくいっていないだろうと予測。
だから全然期待しないで見た。果たして映画はいかに。
あらすじ
スコット・ヘンダースンは妻と喧嘩し、二人で見に行くはずだったショーにバーで知り合った見ず知らずの女を連れて行く。ショーの後、女と別れて帰宅すると妻が殺害されており、すでに刑事が3人、スコットの帰りを待っていた。
妻殺しの容疑がかかるスコットは一緒にいた女にアリバイを証明してもらおうとするが、バーでも劇場でも、乗ったタクシーの運転手までもが、なぜか誰も女を覚えておらずスコットは逮捕されてしまう。
スコットの窮地を救うべく、愛人のキャロルがバージェス刑事やスコットの親友マーロウとともに捜査を開始する。キャロルは「幻の女」を見つけ出してスコットのアリバイを証明し、彼を救い出すことができるのか。
Di Universal Pictures - Life magazine, February 28, 1944 (page 66), Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40419193
原作はなぜ映画向きじゃないのか
原作ファンなので全く期待しないで見たのだけれど、楽しめないのも嫌だから、できるだけ先入観なく見ようと努力したけど・・・ダメだった。
最も致命的なのは、「幻の女」が全く幻ではないこと。
この作品の肝は、自分のアリバイを証明できるたった一人の人物を、なぜか誰も覚えていないというところにある。
妻が殺されて、でも自分は妻を殺していない。殺害時刻は外でナンパした女とショーを見ていたからアリバイはある。しかも女は奇抜な格好をし、ゆく先々で印象に残るような行動をとっている。ところがその女を覚えている人物が誰も見つからないばかりか、女などいなかったと言われてしまう。「あなたは一人でしたよ」と。「女がいた」と言っているのは主人公だけなのだ。
なぜ誰も女を覚えていないのか。
本の場合、読者は物語の前半で散々女の話を読んでいるから、いることは分かっている。でも当然、読者は「読んでいるだけ」で「見てはいない」からまぼろし感がハンパない。どういうこと? 本当に女はいたんだろうかと、不安になる。
ところが映画だと「幻の女」なのに「出てきてしまう」ので、幻にはどうしてもならないという致命的な欠陥がある。
女のミステリアスな感じが皆無で、どうも興をそがれるのだった。
Di film trailer screenshot (Universal Pictures) - Phantom Lady trailer, Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=73839050
イマイチだった理由はそれだけじゃない
さらに「幻の女」がかぶっている帽子が全然違う。これも原作ファンとしては致命的。
原作だと、目の覚めるようなオレンジ色の、カボチャみたいな形の奇抜な帽子なのに、映画はモノクロ映画とはいえオレンジ色では絶対にない。そしてカボチャでもない。
カボチャじゃないじゃん、、、
原作だと、こんなに奇抜な帽子をかぶった女を「覚えていない」なんていうことがあるんだろうか、という興味をそそるようにできているのだが、映画の帽子だとその要素はまるでない。
それだけじゃないぞ。
劇場でみたショーに出ている踊り子が、まったく同じ帽子をかぶっている、という設定は原作通り。
なのに、その劇場で繰り広げられるかなりスリリングな名シーン「幻の女と踊り子の対決」は、映画ではすっぽり省略されてしまっていて・・・やはり残念。
まだあるぞ。
映画は83分しかないから、全体的にかなりはしょって、ポイントポイントをつまんで「ぱっぱっぱ」と進んでいくのは仕方ない。
でも! スコットがつかまって、愛人のキャロルが捜査に乗り出して、そしてキャロルがバーテンダーを追い詰めていく「あの」くだり。
原作では「そこまでやるか」的な、ものすごく効果的で印象深い、戦慄すら覚えるシーンなのに相当省略されていた。あそこ省略しちゃダメ。
これではバーテンの味わったであろう怖さ、心理面がまったく伝わってこない。
ああほんと残念!
私に先入観はあったかも。でも駄作だと思う。
という訳で結論は、これを見るくらいなら原作を読もう! というやつでした。
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