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割と自己流で生きています

ハーラン・エリスン「世界の中心で愛を叫んだけもの」感想

 

 

題名 世界の中心で愛を叫んだけもの
作者 ハーラン・エリスン
出版社 早川書房


訳わからん!!

表題作はいろんな意味で有名作だが、一読したところ意味が分からなさ過ぎて、ちょっと過大評価しすぎじゃないの?というのが率直な感想だった。ストーリーが分からんのよ。

わずか19ページの超短編。あまりにも訳わからん作品だったがために、くやしいがネットでみなさんの力お借りしたが、みんなも「訳わからん」という感想だった(笑)。

仕方がないのでよく考えてみることにする。それで結局、こういうことか、と。

 

交叉時点(クロスホエン)と呼ばれる宇宙の中心みたいな場所があって、そこに住む者たちは自分たちの中にある悪を抽出しクロスホエンの外の世界に排出することで自らの平和を保っていた。その影響は空間や時間を超えて、遥か彼方、過去や未来へも及ぼす。

実際現代の地球ではスタログという男が大量殺人を犯し、西暦452年のフン族の王アッティラのローマ掠奪にも影響を与えていた。

クロスホエンでは今、7つの頭を持つ竜の悪(狂気)を抽出して排出しようとしている真っ最中だが、その抽出法を開発したセンフは「自分たちさえよければいい」という考えに反対し、竜の悪(狂気)を外部にバラまくことを止めようとするが失敗、自らを排出にかける。

その結果「どこの世界、いつの時代に住む人びとをも愛さなくてはいけない」というセンフの善意もクロスホエン外に排出され、それはスタログの「おれは世界中の人間を愛してる」という叫びに現れ、フン族の王アッティラはローマの破壊をやめた。

「自分の開発した排出法の犠牲者となった者の為に記念碑を立ててくれ」というセンフの最後の願いは、スタログが「おれは世界中の人間を愛している」と叫んだ時の表情そっくりの彫像となって、ある惑星で発見される。

しかしセンフの自己犠牲もむなしく、未来の地球は世紀末的なありさまとなっており、さらにドルーガーが「七色の箱」をあけたことで第四次世界大戦がはじまることになる。

 

なるほど、すっきりした。

最後のほう「地獄はある。天国もある。地獄を生み出す狂気は天国の中心から流れ出していて、その中心である天国に入れば平和が手に入る」という部分は意味深だ。

天国の欺瞞、平和の欺瞞。「自分たちだけの平和」という自己完結って、実際にあるもんね・・・個人の中にも、国家にも。うーん、こうしてみると、哲学的な、深い作品なんだ。

結局世界を救えるかはわからないが、希望はある。それは「愛」である、と。やはりすごい作品なのかも(テーマはありがちな気もするが)。