エムログ

古い映画を中心に、本、仕事・・・etc. 驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「雨に唄えば(1952)」 ~ジーン・ケリーを見てるとほんと元気になる(笑)~

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のっけから笑わせてくれる、MGMミュージカルの名作コメディ。映画がサイレントからトーキーへと移り変わるはざまの騒動を描いた作品というだけでも期待できるが、その上ジーン・ケーリーやジーン・ヘイゲン、ドナルド・オコナーら芸達者な出演陣が、畳み掛けるように笑わせてくる。

主題歌「雨に唄えば」も有名、ジーン・ケリーが雨の中、傘を差して唄いながら踊るシーンも有名。ハリウッド・ミュージカルといえば「これ」的な、あまりにも有名すぎる名作。

恋をするってこういう気持になることなんだなって思う(このシーン自体が好きかと言われれば、実はそうでもないんだけどw)。


Singin' in the Rain (雨に唄えば , Singin' in the Rain Theme song)


****** あらすじ ******
時は、サイレント映画時代のハリウッド。ドンとリナは世紀のカップル的にもてはやされる大スターで、特にドンの周りにはいつもファンが群がり、気絶する女の子もいるほどの人気ぶり。10作もの映画でコンビを組んでいる人気女優のリナとは結婚が噂される公認のカップルだけど、実際は事実無根、話題作りにスタジオが噂を流しているだけだった。なのにどういうわけかリナはゴシップ誌に載っている記事を信じ込み、自分たちは婚約する熱い仲だと思い込んでいる。

そんななか偶然出会った売れない女優キャシーに、「あなたの映画なんて1本みたらあとは全部同じよ。それに役者は実際に喋らなきゃ。サイレントなんて大げさな身振り手振りだけで、役者とは言えないわ」とボロクソに言われたドンは、そんな彼女が気になって仕方がない。

いよいよドンの主演作にもトーキーの波が押し寄せてくる。しかし慣れないトーキーに制作は難航。その上相棒のリナは、育ちが悪く教養のないしゃべり方で、しかも声は素っ頓狂、とても映画でしゃべれる代物ではないのだ。しかも鈍感な彼女は、自分のしゃべりが映画スター向きではない自覚がまったくない。そして迎えた試写会は、あまりの出来の悪さに笑いが起こるほど惨憺たる結果だった。

頭を抱えたドンらは、キャシーにリナの声のアテレコをさせることを思いつく。
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リナじゃないけど、実際に当時この映画ばりにトーキーの波に乗れずに消えていったスターが沢山いたらしい。

たとえどんなに声が悪かろうと、田舎っぺ丸出しでなまりがきつかろうと、サイレント映画なら声が収録されないから顔さえ良ければなんとかなる。ファンはみんな、自分の都合の良いように、好みの声を勝手にあててくれる。小説や漫画みたいなもんだ。

ところがトーキーになると、声の良さやしゃべり方だけででなく、演技力までがばれてしまいますからね・・・現在もITだのAIだのと、大きな変化の波に洗われている私たちも他人事じゃない。時代の変化は残酷です。

とはいえ、本作は別にそういう時代の変化を生真面目一本、重たく描く歴史ドラマではぜんぜんない。ジーン・ケリーらしい、明るく楽しいミュージカル・コメディに仕上がっている。映画制作の舞台裏をみせながら時代の変わり目を軽快に見せてくれる。

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で、そういった設定やストーリーも面白いんだけど、とにかくなにが面白いって、まずジーン・ケリー自体が面白い。登場した途端に笑わせにくる。もう漫画ですよ、彼は。

映画開始早々、ドンとリナの新作映画のプレミアがおこなわれてるけど、そのレッドカーペットに現れるスターたちから爆笑できる。絶対バカにしてるよね。大げさに笑顔を振りまいて歩くスターとか、自意識過剰のミステリアス演出やりすぎの、意識高すぎ系スターとか。「でもいるよね、こういうスター。っていうかスターってこういう人たちだよね」っていうデフォルメが面白い。

そこへ満を持して登場するジーン・ケリーがまた輪をかけてわざとらしい(笑)  インタビュー中、これ見よがしに「ニカッ」と笑ってカメラ目線になり、真面目な話はまたわざとらしく真面目な顔でカメラ目線になり、すぐさま観客に笑顔をふりまくといった塩梅。くるくる表情がかわって、営業感丸出し。わたし好きだなー。

ジーン・ケリーのいいところは、こういうおバカなことを嬉々と楽しそーにやるところ。そこがミュージカル・スターの双璧をなすフレッド・アステアとは全く違う(私はもちろんどっちも好き)。

私は演じていない時のトム・クルーズをみると「なんか現代のジーン・ケリーみたいだなあ」と思うのだが、トムは自分のことを劇画的にはとらえてないと思うんだよね。二枚目だから。で、素で変な人に、変なスターになっちゃってる。

でもジーン・ケリーは違う。自分で自分をカリカチュアライズしてると思う。すべてわかってて、計算でやってると思う。なんかすごくクレバーな感じがする(本当の意味で素のジーン・ケリーを見てみたい、と思っている)。

歌って踊る松岡修三。人を楽しませたくって仕方ないんだろうなあ。すごいなあ。好きだなあ。

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他の共演者も。

この映画は友人役のドナルド・オコナーも見どころ。
序盤過ぎに彼ひとりで見せ場がたっぷりあるんだけど、そのマンガチックな動きもさることながら、顔が・・・顔が・・・っていうか鼻が曲がるんですよ! あんなことある? 後半の顔芸もすごいのよ。「雨に唄えば」の「顔の人」として、見たら一生忘れないと思う。


そして素っ頓狂なリナを演じたジーン・ヘイゲンが面白すぎる。彼女ぜんぜん美人じゃないし、この役ほんとバカなんだけど、見てるとだんだん愛おしく思えてくる。そしてリナが心配すぎるw 

とはいえ実際のジーン・ヘイゲンは全然素っ頓狂な声でもなんでもなくて、わずかなシーンだけどちゃんと地声も披露してる。ドンとリナが撮影している劇中映画「闘う騎士」がミュージカル化して「歌う騎士」になってからの試写会で、少しだけリナが台詞を喋るシーンがあって、そこは彼女の地声。

ジーン・ヘイゲンはこの映画でアカデミー助演女優賞にノミネートされてる。
サイコー。

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題名 雨に唄えば
監督 ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
制作 アーサー・フリード
出演 ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ、ドナルド・オコナー、ジーン・ヘイゲン
上映時間 103分
制作年 1952年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル ミュージカル、コメディ、映画音楽、50's


【映画】「さらば青春の光(1979)」 ~邦題に偽りなし。そう、光はないのだ~カルト青春映画の傑作

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「俺は同じなんて真っ平だね。だからモッズさ。大物になりたいんだ」 ジミーの台詞より


バイク、ドラッグ、パーティ、ケンカ。つまらない両親につまらない仕事、希望のない未来。60年代の若者が、精一杯背伸びしてイキがって、そして絶望していく、ジリジリとした焦燥感で一杯のカルト青春映画の傑作。


映画の原作は、ザ・フーのロックオペラ・アルバム「四重人格」。


同じようにザ・フーのアルバムから作られた映画は他にも「トミー(1975)」があって、すごく有名だから一応見ているけど、抽象的で私にはあんまりよくわからなかった(いつかもう一度見直してみるけど)。


ちなみにモッズというのは60年代のイギリスで流行したファッションで、マッシュルームカット、三つボタンの細身のスーツに細いネクタイ、M-51ジャケット、スクーターなどが象徴的。音楽的にはロックの派生ジャンルなんだろうけど、ファッションやライフスタイルで差別化されている感じ。

労働者スタイルといっていいロック・ファッションに対して、モッズは都会的でスマートな印象。一見いいとこのボンボンみたいな。

ビートルズもデビュー前のスチール写真や動画などを見ると、ジーンズに革ジャン、リーゼントのロックスタイルだったけど、結局デビューする時にはモッズ・ファッションになっていた。

イギリスっぽくないですか? 上流階級が存在するイギリスならではのファッション・ムーヴメントだと思う。労働者階級しかいないアメリカでは根付かなかったのも頷ける。


まあ、私は今までザ・フーを全然聴いてこなかったし、聴いていたとしても私には音楽を語る能力はない。さらにファッションを語る資格もないので放棄するが、その「四重人格」を映画化した本作はすごい傑作だった(期待してなかったから思いがけなくてびっくりした)。

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作品の舞台は60年代のロンドン。若者たちの流行のファッションはモッズとロッカーに分かれていて、お互いにいがみ合っている。

主人公のジミーは広告会社のメールボーイ。仕事は雑用しかなく退屈だ。家に帰れば同じく退屈で希望のない両親が、カウチに座ってテレビを眺めている。ジミーはモッズ仲間と共に、バイクとドラッグ、パーティと喧嘩に明けくれている。

海沿いにある町ブライトンで、モッズとロッカーの大きな集会が予定されていて、大きな暴動になることは間違いない。ジミーたちはそのブライトン当日を楽しみにして、その日を充実したものにするべくドラッグの調達に余念がない。

ブライトン当日、意気揚々と参加したジミーは大暴れの結果、警察に捕まり拘留されてしまう。が、一緒に拘留された中にモッズのカリスマ、エースがいた。彼は自分に課せられた罰金75ポンドを「今すぐ払ってやる」と懐から小切手を出してサインをする。ジミーらモッズたちは大喝采だ。

ジミーが50ポンドの罰金とともに家に帰ると、ブライトンに参加し拘留されたことや、ベッドの下にドラッグを隠していたことなどが母親にバレていて大喧嘩になり、家を追い出されてしまう。そのうえ狙っていたステフは仲間といちゃついているし、サボりを上司に指摘され、キレて文句をぶちまけ仕事も辞めてしまう。バイクで街を走っていると郵便トラックと激突しバイクはオシャカ。踏んだり蹴ったりだ。

ジミーが街を歩いていると、ジミーの憧れ、エースのバイクが止まっている。ところがエースはホテルのベルボーイの制服を着て、金持ちの荷物運びをやっていた。幻滅したジミーはエースのバイクを盗み、岬へと走って行く。

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登場人物たちは、別段どうってことのない、目立たないごく普通の若者たちという感じ。大スターが出ているわけでもなく、みんなハンサムでもたいした美人でもない。”見た目が良い”ということになっているピーターだって、別に全然格好良くない。

ジミーの名前なんて、「ジェームズ・マイケル・クーパー」ですよ。平凡すぎるw 親さー、キラキラまでは行かずとも、もうちょっとなんとかしてあげて。

そんな中、ただひとりスティング演ずるエースだけは、さすがに格が違う感じで目立っていた。

学校とかにいたでしょう、仲間内ではカッコいいとか美人とかになっているけど、よく考えてみたら別にどうってことなかったという友達が(アレナンナンダロウネ)。

でも都会とか出るとこ出れば、本当に格好いい光るヤツって、いるよねえ。ちょっと格が違うヤツ。

そのあたりのキャスティングも、これは特別な物語ではなく、見ている観客の、映画館を出た地続きの向こう側にこの物語がある、という感じでリアルなのだ。

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映画の感想を言えば、私は大変傑作だと思った。わたし、このジミーが分かる。いい年をしていまだに中二病の私は、このジミーは私だと思った。

「若い頃ジミーみたいでさあ」とかじゃないよ。

私にはドラッグもバイクもパーティもケンカも無理。私は不良だったことが無いし、不良に対しての憧れはあったけど、その中にいたことはない。

とにかく「つるむ」ということが全くできない。たぶんしたことがない。不良グループだけでなく、デモとかしている人たちの映像を見ても、私は参加できないなと思う。

なぜなら「集団で考え込む」ことができないから。私は私が考えたいし、自分で判断したい。でも集団に属するとその集団の論理みたいなのに賛同しなくちゃいけなくなるでしょう?

それ私できない。だから私はいつもひとりで考えてる。たぶん孤独に強いんだろう。

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だから映画を観ていて、私はジミーの、仲間との毎日みたいなのは理解できない。私はその中にいない。

だけど、ジミーの気持ちはよく分かる。

特にブライトンから帰ってきて、母親にガミガミと怒鳴られるくだりから、俄然この映画は「私が主人公」の映画になった。

親はさ、大人はさ、ずるいんだよ。そうやってさ、「ドラッグがどうの」「警察にやっかいになってどうの」「仕事がどうの」「お前のためを思ってどうの」「ご近所さまがどうの」って、そういう細かいひとつひとつのことだったら、そりゃあジミーが悪いもん。

自分が悪いから、そのやってしまった「悪いこと」から逃げられないもん。

だけど、ジミーが言いたいのは、ジミーがイライラと怒っていて、不良行為をして叫んでいるのはそういうことじゃないの。あなたたちには絶対に分からないことだと思うけど、永遠に分からないことだと思うけど、でもいい機会だから言うよ!


ジミーは、あんたたちみたいになりたくないんだよ!

だけど、なっちゃいそうだからイライラしてんだよ!!

で、結局なっちゃうんだよおおおお!!! くっそー!!!!

・・・字を大きくすることを覚えました。


それにさ、仲間たちもさ、今は一緒になって「社会への反発」「自分を待ち構えている、おそらくつまらない未来への抵抗」みたいなことしてるけどさ、結局はさ、時が経てばみんなさ、さらっとそういう風になっていきそうな気配がさ、漂ってきてるしさ。

結局、自分だけがバカ見て取り残されそうな気配が濃厚だしさ(本当にこの映画はよく出来ている)。あああ、大人になるってなんだろなー。

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映画を観る前は、すでにいい大人の私には、もうこういった青春映画は分からないんじゃないか、と思っていた。

思ってたけど違ってた。

結婚もせず、子供もいない私は、ずっとずっと子供目線で生きる、永遠の中二病だからさああ。

しかも私、今がまさにジミーとおんなじ状況なんですよね。年齢だけじゃあ、ない。


だけどいいよ、若者は。こうやってグレたり拗ねたりして、同じような仲間もいて一緒にグレてくれて、それでも若いからまだ負け犬感もなくて「若さ故の過ち」的に、結果的には ”青春” てことになって。

いい年した大人がジミーと同じような状況で、未来もなくてグレたい気分の時は一体どうすりゃいいですか。大人になると未来が少ないからか、グレてもみすぼらしくって、負け犬感がハンパなくって、なんか・・・格好がつかないんですけど。中年とか熟年は、どうしたら格好良くグレられますか?

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題名 さらば青春の光
監督 フランク・ロッダム
出演 フィル・ダニエルズ、レズリー・アッシュ、トーヤ・ウィルコックス、フィリップ・デイヴィス、マーク・ウィンゲット、スティング、レイ・ウィンストン
音楽 ザ・フー
上映時間 117分
制作年 1979年
制作国 イギリス
ジャンル 青春、ロック
 
 

【映画】「透明人間(1933)」 ~グリフィン、いますっぽんぽんなんだなあ、と思うこと請け合い~

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「血と肉と骨が消えてしまう薬品を作ったのだよ。それを1か月間毎日注射した。これで世界を征服する」 グリフィンの台詞より


ううん、ちょっと傲慢すぎて主人公に感情移入できなかった・・・。世界征服って言われてもなあ。そういえばポール・バーホーベン監督、ケビン・ベーコン版「インビジブル(2000)」でも欲望を抑えられなくなる系の、人間性悪説な感じだった。きっと原作もそういう感じなんでしょう。原作がウェルズだし。

ウェルズって、結構「邪悪な感じ」が漂う。「宇宙戦争」の火星人とか、「タイムマシン」のモーロックとか。明るく楽観的なジュール・ヴェルヌに対して、暗く悲観的なH・G・ウェルズ。面白いけど重くて考えさせられて、読み終わった後ちょっと凹む。今まで「好き」なような気がしていたけど、本当は「好きかと言われれば、面白いけど好きではない」のかもしれないなあ。

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今作は、H・G・ウェルズ原作の「透明人間」の映画化(未読)。人体を透明にする薬品の開発に成功した科学者が、自らに投与し透明になり、凶暴化して世界征服を企てようとする様が描かれる。

世界征服と言っても、今作でやっていることはだいぶチンケな犯罪ばかり。主人公のグリフィンは相当切羽詰まってるのか、出だしからイライラしっぱなし。ごく普通の人々に多大な迷惑をかけて不愉快にし、自分の思い通りにならないとみるやキレて殺してしまうという程度で悪の美学がない。志が低い。

傲慢、凶暴、暴君と化して、必要もない殺人を次々として高笑い。しまいには意味不明に列車を脱線させて崖から落とし、100人の命を奪っていた。

世界征服いわれてもなあ。言ってることとやってることの落差がありすぎてなあ。それにそれ、透明になった程度でできるかなあ。

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この のけぞりっぷり

一見して、スティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」を思い出した。ウェルズにとってのリスペクト版なのかな。

とはいえ「ジキル博士とハイド氏」の方は、自分でも善良だと思っていて、周りにも善良だと思われていた人物(ジキル)が、実は内面奥深くに享楽に溺れたいという本心が隠されていて、だけど体面を気にするジキルは実行できない。だから薬品を使ってもう一人の自分を生み出し、悪徳をそっちのハイドにお任せしようとする。ところがジキルはハイドをコントロールできなくなってしまう、という話だったと思う。空想科学の形を借りた文学だった。

だけどこっちの映画の方の「透明人間」は、主人公グリフィンの本来の人間性がまったく描かれていないから、本来は善良だったが透明になることで邪悪になってしまったのか、もともと邪悪だったのかがイマイチ分からない。

ヒロインのフローラがグリフィンを愛している様子や、グリフィンが透明化の研究を始めたきっかけが、フローラにふさわしい自分になるため大発明をモノにしたいという恋心だったことを告白しているあたりから、以前はそう悪いヤツではなかったのかもしれないと予想できるけど、映画では「人間とは何か」とかに踏み込む気は全然なくて、透明人間を映像的に表現する特撮部分に焦点を合わせた娯楽作として、わりと表面的な作品にとどまってしまっていた。

原作は未読なんだけどウェルズだから彼の他の小説から推測するに、スティーブンソンほど文学ではないとは思うけど、もう少し深く踏み込んだ作品になっていると予想する。映画「宇宙戦争(1953)」しかり、映画「タイムマシン(1960)」しかり、小説と比べると相当表面をなぞっただけの、ただの娯楽作にとどまっちゃってたしね。ウェルズは原作を読んだ方が面白い。

 

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でも想像するに、透明にって、なりたい?

割と「欲しい超能力」的に扱われることが多いけど、私は・・・やだなあって、この映画を観て思った。すっぽんぽんだからじゃあ、ないよ。

孤独感がハンパなさそう。透明だから誰にも気づいてもらえないの(泣)

現実、私も結構孤独だけど、「いる」もん。街を歩けば、すれ違う人がちゃんと私を認識してよけてくれるもん。電車で座っていたら、誰も私の上には座ってこないもん。だから私は「いる」んだと思う(なんだこれw そこまで孤独じゃないよww)。

だけど、グリフィンみたいに本気で「透明」になっちゃったら、マジで誰も気づいてくれないんだよ。信じられる? 電車で上に座られちゃうよ!

そうやって考えてくと、私もグリフィンほどじゃないにしても、気づいてもらいたくなって看板を倒したり、だれかを小突いたりしちゃうかもしれないなあ。そのうちにもっと悪いことして「ここにいまーーーす!」ってアピールしたく、なるかも。

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ちなみに主人公 ”透明人間” グリフィンを演じたのが、このブログでも記事にしたことがある「オペラの怪人(1943)」でパパ・ファントムを演じていたクロード・レインズだった。

今作では終始包帯ぐるぐるで顔が見えないし、脱げば「透明」という役柄だから、全然どこがクロード・レインズなのかさっぱり分からないw 最後、(私には理屈がわからなかったのだが)死ぬと透明化薬品モノカインの効果がなくなるらしくて姿を現すけど、その時も「う・・・ん、クロー・・・ド・レインズ・・・かな。うん、それ・・・っぽいな。うん」くらいの出方。

「誰でもいいじゃんw」って感じ。でも、それは後から振り返ってみてるから言えること。映画デビュー作品みたいだし、今作が話題になってヒットしたためにレインズも一躍有名になったらしい。

私はクロード・レインズは今作と「オペラの怪人」しか見ていないから、「レインズ、なんかいっつも顔隠してるなw」って思うけど、彼はオスカーに4度もノミネートされる一流俳優なので、私のチョイスの問題だった。

 

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そして(なんにもしてない)ヒロイン、フローラ役のグロリア・スチュアートは、あの「タイタニック(1997)」で101歳のローズをやった女優さんとの事。

65年後くらいだから・・・・こっちはこっちで、ローズ・・・かどうかは全然わかりませんでした。

じゃねー。

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題名 透明人間
監督 ジェイムズ・ホエール
原作 H・G・ウェルズ 「透明人間」 1897年
出演 クロード・レインズ、グロリア・スチュアート
上映時間 70分
制作年 1933年
制作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
制作国 アメリカ
ジャンル SF、モノクロ、30's


【映画】「カジノロワイヤル(1967)」 ~ジェームズ・ボンドのおバカ版~ おバカ映画の傑作カルト作品~

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はははー(笑)、この映画大好き。大好きな映画だけど、どんなストーリーなのか全然わからん(笑) わからなくても楽しい、いや楽しいからこそストーリーなんかそっちのけになってしまう尊いおバカ映画の傑作。終始ニヤニヤしながら楽しめる。

そして美女が猛烈に出てくる。若いのから年増まで、はてはエキストラに至るまで、ぜーんいん美女。壁の花みたいなチラッと映るだけの女性でもみーんな美人。隅々まで美人。今までにこれほどまでに全員美人を集めた映画があっただろうかw 

オースティン・パワーズ・シリーズに多大な影響を与えているから、あれが好きな人は絶対見た方がいい。最大の違いは、オースティン・パワーズは「お下劣」だけど、こっちは「お下劣じゃない」ところ。私はあんまり下ネタって好きじゃないから、個人的にはこっちの方がはるかに好き。

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じゃあどんな話だったけ、ということで一生懸命考えてみる。

たぶん、なんか悪の組織みたいなのが暗躍していて、世界中のスパイが次々と行方不明になる事態が起きているのに各国の情報機関は手に負えなくて頭を抱えている。そこで今はすでに引退した伝説のスパイ、ジェームズ・ボンドに復帰してもらおうと、ボンドのところに英米仏露の情報機関のTOPがお願いにやってくる。

でもボンドに断られちゃう。おまけにそこを悪の組織に襲われて、Mは「人体の一部かは意見が分かれる部分」を残して死んでしまう。

それで結局復帰することになったボンドは、自分が直接出向くのではなくて、自分の代わりに大勢の情報部員全員に「ジェームズ・ボンド」を名乗らせて悪と戦わせることにする。

代わりのジェームズ・ボンドたちや、ボンドとマタ・ハリの娘の「マタ・ボンド」らが調査を開始。謎の組織スメルシとその幹部ル・シフルとカジノでバカラ対決をしたりしながら、悪の組織の親玉「ドクター・ノア」の正体とその動機を突き止めるが、その動機はバカバカしいものだった。

・・・こんな感じかな。

でも、はっきり言ってストーリーなんてどうでもよくて、ただただナンセンスな馬鹿馬鹿しさと、豪華な俳優陣のおバカ演技、スタイリッシュなファッションや映像を見ているだけで十分。ちょっとお酒入ってるともっと楽しいかも。

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とにかく出演俳優が豪華すぎる。以下、各俳優の出演映画はこのブログで取り上げた作品名を優先しています。ご了承ください。

主演のジェームズ・ボンドには「80日間世界一周(1956)」のデヴィッド・ニーヴン。今作でも粋でダンディ、そしてかわいい。

 

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もう一人のジェームズ・ボンドには「喰いついたら放すな(1960)」のピーター・セラーズ。ほんとに同じ人?っていうくらい別人に見える。あっちは悪人面のオッサンで、こっちは結構ハンサム。
 

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悪の組織スメルシの幹部ル・シフル役には「第三の男(1949)」の怪優にして ”伝説いっぱい” オーソン・ウェルズ。

 

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Mの妻で年増のミミ/マクタリ夫人役には「キング・ソロモン(1950)」でヒロイン、エリザベスを演じたデボラ・カー。年増になってもすごい美人なのに、真面目な顔しておバカな演技をたくさん見せてくれます。オスカーに何度もノミネートされてる大女優なのに・・・ありがとう。ますます好きになりました。

 

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他にも、ジェームズ・ボンドの中のひとりにNY派名監督のウッディ・アレン、ジェームズ・ディーンとデートしてたことで有名な(わたしはあんま好きじゃない)ウルスラ・アンドレス、名作にいっぱい出ているウィリアム・ホールデン。

ウッディ・アレンてかわいいよね。今作では「ささいなことですぐに死んでしまう」役をやっていた。死ぬのに慣れてそうw 

すごい超チョイ役で、私も大好きジャン=ポール・ベルモンド、私が世界一かつ歴代一美しい女性だと思っている「大空港(1970)」ジャクリーン・ビセット(”ミスふともも”役)、名優ピーター・オトゥールなんかが出ています。
 

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そして数々の名作をモノにしていて、今作の監督であらせられるオスカー監督ジョン・ヒューストンがM役で出てます(笑) とぼけた顔して、ほんと笑わせる。俳優としてもバツグン(実際俳優としてもオスカーをとっている)。

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そもそも今作は、イアン・フレミング原作の小説版ジェームズ・ボンド・シリーズの第一作目で、映画化権を押さえたのはいいけどなかなか映画化に漕ぎつけないうちに、今となっては主流になったイオン・プロ制作、ショーン・コネリーから始まる007シリーズが始まってしまうという、そういう経緯のなかパロディとして制作されたらしい。

いいよ。よかったよ。私は本家よりもこっちの方が断然好みです。

わたし本家ニガテなの。なんか男臭すぎて、いまひとつ興味が持てないの。本家は「強い男とおもちゃの女」というイメージで、男の少女マンガって感じがする。わかってもらえるかなあ。男のファンタジー、男が男らしくて見てる男がうっとり、みたいな。私は典型的な少女マンガも全然好きじゃないし。

こっちはそういう思想とか美学的なことは全然ない。頭を空っぽにして、にやにや楽しめる良作です。

見てほしいなあ。必見なんだけどなあ。

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題名 カジノロワイヤル
監督 ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト
制作 チャールズ・K・フェルドマン
脚本 ウォルフ・マンキウィッツ、ジョン・ロウ、マイケル・セイヤーズ
原作 イアン・フレミング 「カジノ・ロワイヤル」1953年
出演 デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、ウディ・アレン、ウルスラ・アンドレス、デボラ・カー、ジャクリーン・ビセット、オーソン・ウェルズ
音楽 バート・バカラック
上映時間 131分
制作年 1967年 
制作国 イギリス
ジャンル アクション、スパイ、コメディ、パロディ、おバカ



ハズキルーペは本当に おすすめ だった ~眼鏡にポルターガイストがおこった結果、お困りの老眼が解決したよ~

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mです。

こないだ、出勤途中にいつものようにバスに乗っていたんです。
指定席化しているいつもの席に座って、普通にスマホで最近の韓国事情かなんかをチェックしていたら、上からぽこんとなにかが落ちてきて顔に当たってきたんです。

きょとんとして「虫かなあ。虫にしては当たりがちょっと違うような」と思って、うーんと考えてました。

「なんかなー、は!」と予感がして、なんとなくメガネをはずしてみたら、なんとメガネの鼻のところについている鼻パッドの左側がない。

え? どゆこと? これが落ちたの? そんなことある? 上から落ちてきたように思ったけど。

朝起きて速攻メガネかけて、それから軽く1時間ちょい経ってるんだよ。その間に私の顔面で、そんな事件が静かに進行していたとは露ほども気づかなかった(ま、服に穴が開いていても気づかない女なんだけどさ)。

哲学を感じたね。シューディレンガーの猫的な。蓋開けたらメガネが壊れてた。

軽く動揺したよねー。これから仕事なのにー。はー。スペアもないしなー。完全役立たずになってしまう。出勤する意味なし。ま、鼻あてはなくてもかけられるんだけど (*´з`)

 

「あれをやるしかないのか」 


高校時代の部活での出来事が頭をよぎる。

はるか昔、ソフトボールの部活動でバッティング練習をしていた私は、自分で打った打球を自分の顔面に当ててメガネを壊した経験がある。

そのときはメガネのつるの部分が外れてしまい、こうなっては私はまるで役立たずだから「一刻も早くメガネ屋に行って修理しなければ! ラッキー! さぼれる!」と喜び勇んで部活の顧問のところに報告に行ったら、迷いなくネジの穴のところに糸をぐるぐると巻きつけて「はい」と渡されたことがあった。

いやー、びっくりした。顧問の動きに「どうしようかな」みたいなタイムラグがまったくなかったもんで。

くるくる糸を巻きつけていく顧問のその手元を見ながら「あ、そうなんだ(帰れないのか)」と悟ったもん。

さてはヤツも経験あるな。



というわけで「あれをやるしかない」私は、「鼻あてだけでも救出しなければ」と、座ったままの状態できょろきょろ探してようやく鼻あてだけは救出に成功。でもさすがにネジは発見できなかった。

ねじがゆるんでたのかなあ。雑に扱っているからなあ。でも今までの35年におよぶ眼鏡ライフでそんなこと一度もなかったのになあ。

20代の、引きこもっていて超絶貧乏だったころ、普通にテレビとか見てるとメガネのレンズが「ぽろっ」と落ちることはよくあったけど(マジデ)、鼻あてはなかったなー。

ネジが緩んでたのかー。気づかなかったなー。買い換えて1年ちょっとなのになー。

で、出勤して、ソーイングセットをお持ちの方を探してお借りし、誰にも見られないように「くるくるくるくる」とメガネに鼻あてを糸でくくりつけ、その日の仕事は無事に終わったのでした。

誰も気づいてくんなかった(カナシイ)

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そして仕事帰りに近所の眼鏡市場へ行って鼻あてをつけてもらい、ついでにハズキルーペを買っちゃった!!

ハズキルーペ ラージ 1.6倍 ブルーライト対応 クリアレンズ チタンカラー+セブンエステアイパッチ


ついでだからね。出かけるの嫌いだから。一度に終わらせたいの。


老眼って知ってる?

食事の時に、こう、箸でつまむでしょう、口に近づけるでしょう、それを目で追うでしょう、すると何を食べてるのかがわからないの! びっくり。

魚の骨なんて絶対に見つけられない。よく見ようと思って近づけるとむしろ見えなくなっちゃって、離せば当然のように見えないの。ちぇ。不便。


そのうえ本が読みづらくて集中できず、「悲しい (-_-)」「とても悲しい (+_+)」と思っていました。

「近眼は老眼にならない」と10代のころに吹き込まれ、自分が老眼になることをほとんど想定せずに生きてきたのです。

それが数年前にメガネを新しくする際、眼鏡屋さんに「手元が見づらくなっていませんか? 遠近両用もありますぜ」と勧められ、ご丁寧に「ほら今のメガネだと見づらいでしょう」と新聞をパウチしたようなものを渡されて「老眼チェック」をさせられました。シンセツー。

その頃はまるで自覚がなかったので、「???」となって、「んー、不便を感じていないんで」と言って「とにかく遠くが見たいので」と遠近両用はお断りしたわけです。

が! その後、みるみる老眼が進行。本を読むのに集中できなくなっていきました。

えー、気づかせるから気づいちゃって、それで自覚しちゃったもんだから老眼になっちゃったんじゃないのお。あーあ。


だけど kindle paperwhite で本を読むときにフォントサイズを大きくするのは嫌なの。意地があるから。

昔から本というものは活字が小さいって相場は決まってるの。

昔の岩波文庫なんて、今となっては想像を絶するくらい字が小さいよ。小さいうえに旧漢字なんだよ。画数多すぎるって。

「本とはそういうもの」と思ってるから、本当は近年の「どんどん活字が大きくなって、行間が広くなって、無駄に本が分厚くなっていく様子」というのを、あんまり好ましく思ってなかった。

だって、なんか、ばかみたいなんだもん。どこぞの教祖様がたくさん出してる本みたいじゃん。

でも。背に腹はかえられない。自分が老眼になって、本の字が大きくなるのも仕方ないと思うようになった。高齢化だし、活字離れが叫ばれてるし(私が知る限り30年は叫ばれ続けているが)。実際読みづらいし。


そこで、職場の方にもすすめられた「ハズキルーペ」を購入するに至ったのでしたー。

外ではかけないから。家でだけだから。



というわけで、ハズキルーペなんですけど、これはスグレモノだと思いました。もう明らかに違う。明るい、くっきり、読みやすい。

「人生長いこと、この距離感で本を読んでいた」という、その距離感に戻れます。だから気持ちが落ち着いて、とても読みやすい。

もちろんスマホも見やすいです。


拡大率が3種類、レンズの大きさは大小2種類、色はたくさん。

おそらく迷うのは拡大率なんだと思いますが、一応目安としては、
PCやタブレットを使用するときに困っている ⇒ 1.32倍
本や新聞を読むときに困っている ⇒ 1.6倍
それ以上に細かい手作業や仕事をしたい ⇒ 1.85倍
ということにハズキルーペさん的になっている。

そして実際に店頭で比べてみた感想ですが、
1.32倍でもあきらかに本の字が読みやすくなる(明るくくっきり見える)。でも1.6倍の方がよりくっきり読みやすいな、という感じでした。そしてそれ以上は必要ないな、と。ハズキルーペさんの言う通り。

私の目的は「本の読みやすさ」で、PCやタブレットでは全く困っていなかったので、迷わずに「1.6倍にします」と言いました。

レンズの大きさは、私が現在使用しているメガネが割とレンズが大きめで、ハズキルーペはメガネの上からかける関係上、下を見るとメガネの下側にハズキルーペが届いていないということになって何の意味もないので、大きなレンズを選びました。大は小を兼ねますよ。

色はたくさんありますが、基本的に「ラメ入り」です(笑) 店員さんも「確か黒は・・・あ、こっちも入ってますねww」って言ってた。ラメいるー? ハズキルーペさんのこだわりなんでしょう。すべてラメ入り。 

金額は 10,980円 でした。うん。その価値はある。オススメです。

嬉しくなって、「本読むぞー」という気持になったー(じゃあ感想文かけよ)。


お求めはこちらから(笑) ↴ 読書ライフが戻りますよ。 

 

【映画】「80日間世界一周(1956)」 ~見どころはフォッグとパスパルトゥとエンディング~

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風呂の水は40センチでなければいけません。ピッタリにです。
朝食のトーストの温度は28度です。ピッタリに。
   ~フォッグの執事、退職の理由より~


大好きなジュール・ヴェルヌ原作「八十日間世界一周」の雰囲気をそのままに、フォッグとパスパルトゥの魅力を強化した傑作。ヴィクター・ヤングの主題曲も有名。


「海底2万マイル(1954)」「地球の危機(1961)」「M(1931)」と紹介してきたピーター・ローレがちょい役で出ているし、前回取り上げた「2300年未来への旅(1976)」を監督したマイケル・アンダーソン監督作品でもある。最高に楽しい大好きな作品です。

80日間で世界を一周できるかどうかを友人と賭けた主人公フォッグが、執事と二人で世界一周の旅に出る、というストーリー。フォッグは全財産をかけて世界を一周するのだが、映画の方は原作にはない気球も使っている。

観光映画とも言えるかな。

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****** おはなし ******
1872年、主人公フィリアス・フォッグはクラブの友人らとホイストの最中、友人の「3か月で世界一周できる」との言葉に「いや80日間でできる」と言い出し、できるできないの議論を経て、20,000ポンドを賭けて80日間で世界一周するべく、執事のパスパルトゥと共に旅に出る、という話。フォッグが旅立つ直前におこった銀行強盗の首謀者がフォッグであると睨んだ刑事フィックスが、旅の間中執拗に張り付いて邪魔をしてきたりもする。

英国ロンドンをでてまずはパリへ行き、そこから気球でうっかりスペインへ、高速艇に乗り換えて南仏へ、船でスエズ運河を通ってインドのボンベイへ、そこからインド横断鉄道で香港へ向かうが線路が途中までしかなくて象に乗り換え、インドのお姫様を悪習から救って一緒に香港へ、船で横浜を経てサンフランシスコに到着、鉄道でアメリカを横断する最中にひょんなことから決闘を受ける事になり、インディアンにさらわれたパスパルトゥを救出し、トロッコでNYへ向かい、船でロンドンへ戻ろうとするが船に乗れず、仕方なく間に合わせの蒸気船で大西洋を渡るが燃料が足りなくなり、船にあるあらゆる木材を燃やしてなんとかリバプールへ到着、約束の時間に間に合うと思われたのだが、フォッグが逮捕されてしまい、ロンドンへ到着したときは約束の時間を過ぎていた。
******************

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物語もさることながら、なんといっても主人公フィリアス・フォッグとその執事パスパルトゥのキャラクター設定が魅力的。

フォッグは40代の独身主義の男で、寡黙で人嫌い、親戚もなければ妻も友人もなく、莫大な財産を持っているようだが仕事をしている様子はなく、その富がどこから来たものなのか誰も知らず、時計のように正確に行動し、極めて冷静沈着で鉄の意志を持った謎のような男。

とにかく自分が決めたルーチン通りに物事を行っていくため、あまりの厳格さに半年で5人もの執事がやめていくほど。冒頭のセリフを言った執事に「あの方はオニです」とまで言われていた。

実際、映画に登場したフォッグはのっけから几帳面。クラブに入る直前に足を止めて懐中時計を取り出し、街の時計台に目をやって、時報が鳴るのと同時にクラブに入っていくという正確さ。時計があっているかを確認するというよりも、自分に時計と時報が合っているかを確認しているんだと思う。

自分の新聞を自分より前に誰かが読んだと目ざとく見つけ、「私に古新聞を読めというのかね」と言って新品と取り返させたり。クラブの仲間からは「家柄も仕事も不明、狩りも釣りも女遊びもしない」と言われ、唯一の趣味はホイスト(カードゲーム)。

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「どこへ行っても外国でも自分の習慣を変えない」と言われている英国人だが、フォッグはさらにその上を行っている。

船の中で船長が「暑いので昼は特別メニューのカレーにしましょう」と言って、乗客たちも「いいねいいね」と言っているのに、フォッグは「予定通りで頼む。私の木曜の昼食は常にホット・スープと舌平目にロースト・ビーフ、ポテトに糖蜜だ」とブレずに言って、周りはシーンとしてたww  どうやら曜日ごとに食事が決められているらしい。

それだけではない。甲板で書き物をしながらするお茶の時間も決まっているようで、嵐の中、誰もいない甲板で、飛ばないようにシルクハット(?)をスカーフであごに巻き付けてお茶をしていた。徹底してる。



フォッグは服装も一分の隙もなくビシーッと決まってる。ダンディというより「粋」な感じ。貴族的。

私の好きなマイケル・ケインも粋だけど、ケインは「やや不良がかった粋」で、このフォッグを演じたデヴィッド・ニーヴンは「貴族的な粋」という感じでちょと違う。

二人とも格好いいよねえ。いかにも歴史に王族や貴族を持つヨーロッパ人って感じで(この二人はイギリス人)。根っから民主主義のアメリカには絶対に出てこないタイプ。


常に冷静で感情が表に出ないタイプだけど、インドのお姫様がピンチとなれば即決で救いに行くし、パスパルトゥがインディアンにさらわれたとあれば先頭を切って駆けつけるし、侮辱されれば決闘には応じるし、ばっさばっさと札束を切って迷いとは無縁の決断力と行動力。常に先を見通す洞察力。凡人とはスケールが段違いに違う。すてき。

最後は変人の自分を愛してくれる、ぴったりの女性がみつかってよかった。

相手のシャーリー・マクレーンは可愛いけど、インド人にはまるで見えなかったけどね(笑) ただインド風のメイクをしたシャーリー・マクレーンだった。そしてなんの見せ場もないという、ただいるだけの役w 映画デビューしたばかりだからしょうがないか。

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そんなフォッグに付き従うのが執事のパスパルトゥ。

彼は冒頭に引用したセリフを言って辞める執事の話を聞いたうえで立候補して、フォッグに雇われている。

パスパルトゥも、数々の職歴を誇るちょっとしたスーパーマンみたいに使える男。

発明されたばかりの自転車に乗って颯爽と登場し、気球のバルブが調子悪いとなれば上空であっても気球の上にのぼって直そうとするし、フラメンコは踊るわ、闘牛士デビューするわ、ダチョウにも器用に乗るし、異国日本ではぐれてひとりぼっちになった横浜では曲芸師のアルバイトをするし、言葉も達者でスペイン語もペラペラだし。

「昨日」雇われたばかりなのに極めて主人思いで、ご主人様のためなら何でもするが、失敗もしてしまうのが可愛い。

女に目がないのが弱点で、目の前を女性が通るだけでふらーっと付いて行っちゃうところが玉に瑕。だけど常に旦那様のために行動しようとしていて、すごくチャーミング。パスパルトゥー大好き。

無敵のコンビです。

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この映画は、「スターを探せ!」と言われただけあって、当時のスターがチョイ役で大勢出ていることでも有名。この映画以降、いわゆる「カメオ出演」という手法が一般的になりました。

みんなどのくらい分かった? 私はたいしてわからなかった。

最初の方のパリで、「舞踏会の手帖(1937)」でファビアン役をやっていたフランスの俳優フェルナンデルがでてたでしょう。
あと舞台がアメリカに移ってから、酒場の女にマレーネ・ディートリッヒ。「いるー」って感じで出てて、見過ごしようがない。
同じくレッド・スケルトン。
同じくフランク・シナトラ。こっちも「映るよ映るよ、あーやっと映った」みたいに、じらしてからのアップ!みたいな。
そして大陸横断鉄道の車掌にバスター・キートン。
それくらい。
顔は見たことあるけど誰だっけなー、なにで見たんだっけー、って感じで、やっぱり相当有名じゃないと分からなかった。

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パスパルトゥはこれ

でも大丈夫。この映画はエンディングが答え合わせみたいになっていて、イラストで映画の場面を振り返りながら、どこに誰がどんな役で出ていたかが分かるようになってる。

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フォッグはこれ 時計にシルクハット

しかもそのエンディングのタイトル・デザインが、あのソール・バスなのでした。わー、ぱちぱちぱち。

このブログでは今のところ「バニ・レークは行方不明(1965)」だけがソール・バスのタイトル・デザイン。

紙を破るとタイトルとかクレジットがでてくるオープニングが印象的。

 

www.mlog1971.com

 
いつかこのブログで「ソール・バス特集」をするのが目標のひとつです。そのためにもたくさん映画を観て、ソール・バス探しをしなくっちゃ。

じゃねー。

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Victor Young 映画「80日間世界一周」 Around the world



題名 80日間世界一周
監督 マイケル・アンダーソン
制作 マイケル・トッド
脚本 S・J・ペレルマン、ジェームズ・ポー、ジョン・ファロー
原作 ジュール・ヴェルヌ「八十日間世界一周」1872年
出演 デヴィッド・ニーヴン、カンティンフラス
音楽 ヴィクター・ヤング
タイトル・デザイン ソール・バス
上映時間 169分
制作年 1956年
制作会社 ユナイテッド・アーチスツ
制作国 アメリカ
ジャンル 冒険、観光、タイトルバック

 

 

 

【映画】「2300年未来への旅(1976)」~ファラ・フォーセットがチョイ役で出ている管理社会SF~

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「2001年宇宙の旅」にあやかりすぎな、全然未来にはいかないという、邦題に偽りありな作品(コレドーナノ)。

私の好きな近未来&管理社会もの。この手の映画が好きになるきっかけになった、個人的には記念碑的な作品。別に管理されたい訳じゃなくて、そこからの脱出のカタルシスが好きなんだと思う。

とはいえ今作は、その解放のカタルシスはほとんど感じられないのでした (*´з`)ザンネン


****** あらすじ ******
23世紀。戦争、人口過剰、汚染などで地上に住めなくなった人類はドーム状の建物 ”シティ” に住み、外の世界を忘れていた。コンピューターに管理され、飢えや恐怖とは無縁に快楽を追求する人類の唯一の制約は、30歳までしか生きられないこと。シティからの逃亡者を粛正する役目の未来警察サンドマンのひとりローガン5は、ある日外の世界にある ”サンクチュアリ(聖域)” の調査と破壊をコンピューターに命じられる。ローガン5はデート回路で出会った女ジェシカ6と共に外の世界へ向かう。
***********************

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いかにも60~70年代ぽいヒラヒラの衣装と、大阪万博のパビリオンみたいなセットがちゃっちくて、今見るとかなりB級テイストを感じる。

この映画の翌年の1977年には「スターウォーズ」と「未知との遭遇」が公開され、SF特撮の次のステージに入って行くから、今作はその時代の変わり目に古い感覚で作られてしまった感は否めない(とはいえ今作以降も割とこのセンスで作られたSF映画はあるけれども)。

1968年には「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」が、1972年にはソ連の「惑星ソラリス」が制作されているし、他にも「時計じかけのオレンジ」とか「ソイレント・グリーン」とか名作SFをたくさん経ているのに、あんまりそこから学ぶこと無く作られちゃった感じ、ある。センスが古い(スタンリー・キューブリックと比較するのは酷だと思うけど)。

監督のマイケル・アンダーソンは、今回調べてみるとこの映画より前に「八十日間世界一周」とか「1984」とか「さらばベルリンの灯」などを監督してきた人で、意外と私は見ているのだった。

良い映画いっぱい撮っているんだなあ。だけど今作がターニング・ポイントだったかもしれない。今作以降の作品は未見ながらやや作品のランクが、がくっと落ちているような気がする。50~60年代がピークだったか。

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セットとか衣装以外でも、設定と脚本がイマイチ甘い。

まず「シティのコンピューターを誰が制御しているのか分からない問題」がある。コンピューターを使って人々を洗脳して支配することで得をするような存在が、全然見当たらないのね。「外は怖いよ~、だから出ちゃダメだよ」って言っている人がいない。

これに関しては、

① 最初は戦争とか汚染などで地上に住めなくなった人類が、自然環境と隔離するドームを作ってその中で生活するようになった。
② その頃は外に出るのは極めて危険だから誰も出ない。
③ しかし世代を重ねるうちに、ドームに住む元々の理由や、外の環境が住めるように復活したら外へ出ていくといった目的も忘れられていく。
④ その頃にはシステムの維持がコンピューターに任されていて、システムを維持することが目的になってしまう。
⑤ コンピューターは改善をしないし、疑問も持たないから、なにも考えずに淡々とシステムを維持し続ける。
⑥ 人々も洗脳されて思考を停止しているから、従順にシステムに乗っている。

という具合で私の中では理解されているので問題ない。「維持だけが目的」になっちゃってるんだろうな、みたいな。



むしろ私にとっての問題は、そのコンピューターがなぜローガン5を外に行かせたのかがよく分からないところ。

確かにシステムに従順なものばかりではなくて、シティのはずれにある寺院には不良少年たちが住みついているし、「30歳以上生きたい!」と思う者が反抗者となって外に出て行こうとしたりはしている。

しているけど、そんなに切羽詰まった状況でもなさそうに見えるんだけど・・・自分で事を荒立ててしまっているような。自分で寝た子を起こしちゃった感があるのだが。

「2001年宇宙の旅」のHAL9000みたいに、自己保存本能ってことなのかなあ。

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結局、外は人も残っていなくて荒廃していて聖域なんてどこにもなかったし、動物もほとんど生息していない様子だったから、脱走組なんて放っておけばよかったのに。ローガン5を行かせたことで彼に疑問を与えてしまった。


だいたいローガン5の手のひらのタイマーの時間を4年ほど進めてしまったのがよくありませんでしたな。

この世界では、生まれると手のひらに白いクリスタルが埋め込まれていて、これが確か16歳になると緑に、26歳になると赤に、そして30歳が近づくと点滅し、それが黒くなる30歳で「生まれ変わりの火の儀式」を受けて消滅、新しい命に転生して生まれ変わる、というスケジュールになっている。

そのタイマーが点滅すると「もっと生きたい」思う者がでてきて、それが脱走者となるという経緯がある。

そこでコンピューターはローガン5に外の世界を調査させる際、脱走者らしくみせるために、このローガン5のタイマーを赤から点滅状態へすすめてしまう。これがきっかけで急に死が身近になって、ローガン5は本当に脱走をもくろむようになってしまうのだ。

それまではモラトリアム的に呑気にサンドマンとして脱走者狩りをスポーツのように楽しんでいたローガン5だったのに・・・コンピューターさん、判断ミスでしたな。

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他にも、シティから外界へ出る途中で出会う銀色の人型ロボット(ボックスだったかな?)の存在がなんなのかイマイチよく分からないとか、食事のシーンが皆無なので何を食べているのかよく分からなかったりもする(飲み物を飲んでいるシーンが多いから、あれで栄養をとっているのかな?)。

最期コンピューターが自己崩壊するあたりも、なんでかよく分からなかった。



でも、個人的にもっとも「ああもったいない」と思ったのは、外の世界で出会う「老人(Old Man)」の取り扱い。

出てきた時は「は! ソイレント・グリーンのブックマンぽい役割かな!」と思って身を乗り出したのだが、まったく180度違う人物設定だった (´Д⊂ヽトホホー。

リンカーン記念館に住んでるのかな? 図書館みたいに本がいっぱいあるのに、まったく何にも知らない役立たずぶり。あれもこれもどれもそれも、何にも知らないの。それに本がいっぱいあるのに、誰もそのことにひと言も触れないのー ヒャー。


ここは「タイムマシン(1960)」みたいに、失われた知識を嘆くとか、読みたいんだけど風化しちゃってどんどん読めなくなっちゃってさーとか、なんかひと工夫欲しい。ありがちな展開って、安心感があっていいじゃない?

 

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あるいはやっぱり「ソイレント・グリーン(1973)」のブックマンみたいに超絶物知りとして登場してさ、知恵も知識も失った人類の一縷の望み的な立場を与えてさ、未来はこの一人の老人と大勢の無知な若者に託されました、みたいな展開でいいじゃない。

 

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それを・・・すべてドブに捨てる展開に・・・(; ・`д・´)ドユコトー。爺さん、ただの雰囲気づくり。賢者風のたたずまいで、たたずまいが賢者なだけ。

無知な老人と数千人の無知な若者の集団って、このメンツでは人類の未来は暗いじゃないですかー。滅亡だな。

ラスト、洗脳から解き放たれた人類って感じでハッピーエンドみたくなってたけど、確実に滅亡だな。ローガン5、とんでもないことをやらかしましたな。



・・・いろいろ悪く書いちゃったけど、10代の頃にTVで見て、題名を忘れちゃって、「近未来で管理社会もので、そこから脱出する映画」「手のひらにガラス玉がはまっている映画」「氷河期みたいなシーンがあった」程度の情報で、足でDVDを探し当てたという、私にとってはあるあるの愛すべき思い出の作品なのは変わらないのでした。

なんか最近ハリウッドでリメイクの話もあるみたいだし、改善されることを期待してます。できれば私好みに(デキネーヨ)。


ところで、ファラ・フォーセットなんか出てたんだね。それもちょい役で。チャーリーズ・エンジェルで大ブレイクする、ほんのちょっと前なのかな。美容整形外科医の助手かなんかの役で、頭が悪そうで、すぐに死んでいた。そして英語で何を喋っているのか皆目わからない私でも分かるほどの、みごとな大根女優ぶりでした。


それから気になったのは、ローガン5の友人フランシス7。ゲイなのかなー。ローガン5を追い詰めていく執拗さは尋常じゃあない。ローガン5と一緒に行動を共にするジェシカ6を「こんな女!」って言ってたし、風呂に誘ってたし。

この社会では同性愛は普通のこととして受け入れられてるふしがあったから、普通なのかもね(ローガン5がデート回路でセックス相手を探していて、ジェシカ6が引っかかるんだけど、その時拒否るジェシカ6に「女が良かった?」ってローガン5は言っている)。

好きだったんだね。

じゃね! 

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題名 2300年未来への旅
監督 マイケル・アンダーソン
出演 マイケル・ヨーク、リチャード・ジョーダン、ジェニー・アガター、ピーター・ユスティノフ、ファラ・フォーセット
上映時間 118分
制作年 1976年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル SF、70's、ディストピア